早朝にザッと降った雨を境に気温はストンと下がっていった、日付けも変わった深夜帯は熱帯夜すれすれの暑い夜だったというのに、その4時間後は8度も下がっていきなり肌寒い。
こんな極端な日に仕入れた食材の中に「紫」と呼ぶ野菜が入ってきた、紫=長茄子なのだ、普通のものと区別するために私と仕入れ業者とでは長茄子の時だけ紫と言う。
博多長茄子や久留米長茄子といった品種で「大長茄子」と一般に呼ばれることもある。
とは言っても決して最近新たに登場した品種というわけではない、逆にいろいろと改良される前の昔ながらのもので、皮が薄くて柔らかく傷みやすいので品種改良
された丈夫な今の茄子に取って代わられたのだ、この露地栽培物がもっと多く出回り始めると季節は初夏から本格的な夏へと移る。
実家やその周辺では昔ながらのそういった地場物を「紫帽」(むらさきぼう)(帽子=ヘタの部分)とも呼ぶこともある、先にも書いた通り私と仕入れ業者では「紫」と呼ぶ、そのくせずっと後になって出回り始めた今主流の品種は単に「茄子」としか呼ばない。
きゅうりを品種で「きゅうり」と「すーよー」で呼び分けて区別するのと似ている、こちらも後者が出回り始めると季節は夏を迎える。
どちらも昔ながらの夏野菜なのだ。
紫をスーパーで見かけることはそれほど多くはなく、大規模なハウス栽培のものとは違った流通をしたりで、飲食業者が買って行くか、個人経営の八百屋やリヤカーで売りに来るというウェイトが高い。
価格は普通の茄子とそう変わらない、安い時だってある、ずんぐりコロコロとしたものではなく、しなりそうな柔らかさを持った長い茄子なのだ、調理法は他のものと同じなのだが、漬物や塩揉みで充分美味しいのは皮の柔らかさのお陰、塩で揉んで固く絞ったものに鰹節と醤油で・・・というのは質素ながら美味しい、暑い夏の食欲のない時にはぴったりである。
火を通しても美味しいのは言うまでもないこと。
ところで、茄子を味噌汁の具にすると汁が黒っぽくなってしまったと言う人は多いと思う、自炊派の人はどうやって対処しているのだろう、そんなの気にしないという人もいるだろう、実際のところ味に影響はないのだけれど。
見た目の悪さが気になるのであれば切ってサッと水で洗った茄子を煮立った出し汁の中に入れてそのままグツグツとしっかり煮立てて火を通してしまうのだ、温度が下がらぬようにするのがポイント、そうすると色が出にくくなる。
おっと、味噌を入れる時は火を止めて。
最初のうちはコツが掴めず失敗するかもしれない、でもすぐに慣れるので大丈夫。
何度かネットで見たことがある「ヘタの部分も入れると色が出なくてきれいな味噌汁ができる」という説の真偽はわからない、色が出そうな条件で実験してみたが黒っぽい味噌汁の出来上がりで美味しそうにはできなかった。
弱火の出し汁の中へ一気にガサッと入れてしまうという意地悪な条件のせいだったのかもしれないが。
いずれにしろ、これからが美味しい夏野菜をたっぷり食べて欲しい、茄子にはたいした栄養は無いとよく言われる、それでも、巡ってきた夏に実るのにはきっと意味があるはず。
その季節に食するその季節ならではの食材はきっと体に優しいはずだという気がするし、そうであってほしいとも思うのだ。