夕方に近所のスタバで友人のK氏と少し話をした、時々待ち合わせをする天神やJR博多駅のそれではなく、私がいつも寄るディスカウントストアの隣にある店舗だ、K氏の普段の生活域から外れたそこで会ったのはK氏が仕事で東区の照葉まで行った帰りだったからだ、K氏は約束の時間より随分と早く来ていたらしい。
私たちは店の奥の椅子に窓側を向いて並んで腰掛けた。
特に用があるわけではない、とりとめのない話でお互いのんびりしたかったのだ、だが、ふいに「そうだ、あのね」とK氏が自身の友人のことについて切り出した。
そのK氏の友人とは隣県に住む40代の人で、福岡の飲み屋で知り合ったという少し年上の50代の人に恋い焦がれていてなんとか親しくなりたくて頑張っているが全く進展しないのだと言う、50代の人が40代の人を避けているのだ、K氏から見て40代の人の容姿が劣っていたり性格が悪かったり、無職や極端な金欠といった欠点があるわけでなく、むしろモテる側の人ではあるという、対する50代の人はいかにも昭和の中年オヤジといった風貌の人らしい、それでもその2人は最初の数ヶ月はなかなかいい感じの関係だったという。
ちなみに、K氏は40代の人と友人であるのと同時に50代の人とも飲み仲間として親しい。
つい最近になって40代の人が毎週1、2通のメールを50代の人に送っているのを知ったという、それは本人から聞いたそうで、かれこれ半年近くになるらしいのだが1回も返信はないという、K氏は驚いて「1回も返事ないの?」と訊くと頷き、「まあ、でもいつか返してくれると思うから」と笑っていたそうだ、メールの内容は泣き言を綴るわけでなく、うんざりされぬよう最近のことをさらりと書くに留めているとか。
いろいろと気を使っている40代の人を不憫に感じたK氏は飲み屋で居合わせた50代の人に「たまには返事出してあげればいいのに」と言うと「もうずっと前にメール拒否してるから全然知らない」と一言、なんと、半年と言わずそれ以前から40代の人からのメールは設定で拒否しているらしい、50代の人のメールアカウントは携帯キャリアのそれで、拒否設定の際は婉曲にメール拒否した旨のエラーメールを返すか、全くレスポンス無しにするかの選択が可能らしく、デフォルトでは後者になっているのだとか。
つまり、40代の人はエラーメール等が一切返って来ないのでメール拒否されているのを知らぬまま半年もずっとメールを送っていたことになる、そして、K氏が告げぬならこの先もそれを知らずに来るはずもない返信を待ち続けながらメールを送ることになる。
だが、K氏は告げ辛いと言う、確かに、その気持ちは分かる。
「ねえ、どうする?」と私ならどうするのかをK氏は訊いた、・・・んん、どうするのだ、ドライブスルーから出て行く何台分かの車のテールライトを店の中から見送りながら告げたほうがいいのかどうなのかしばらく考えてみたが正直なところ分からない、ただ、私がその40代の人なら「50代の人はメールが嫌で拒否してるって言ってたぞ」と告げてもらったほうがすっきりするだろう、多少は落ち込むだろうがさっさと次の男を探す決断ができるのでありがたい。
とはいえ他所は私ほど単純ではないだろう、さて、いったいどうしたものか。
それにしても40代の人はよほど惚れているのだろう、返信のひとつもくれない男にそこまで思いつめるとは、50代の男は一体どんな感じなのだと詳しく訊くと顔も背格好も『デガワテツロウ』に似ていると教えてくれた。
帰宅後に検索、デガワテツロウ=出川哲朗なのだな、テレビで見たことはある、・・・その50代の人はこんな感じなのか!
・・・まあ、人の好みはまさにそれぞれなのだなと強く思う。