2017年5月29日月曜日
秀作サスペンスドラマ
Netflixで久々に見応えのあるドラマを見つけた、新着だったのだ、1日に1シーズンずつ、3日で全3シーズンを見終えてしまうほど浸ったドラマはイギリスBBC制作の「THE FALL 警視ステラ・ギブソン」である。
原題は「THE FALL」、邦題の「警視ステラ・ギブソン」の部分は野暮ったいので要らぬのではないかという気はする。
このドラマに登場する犯罪者は幼少期を恵まれぬ家庭環境で過ごし、思春期の少年には過酷な施設暮らしを余儀なくされた男の現在はカウンセラーを生業とする2子の良き父であり優しい夫なのだが、家族は知らぬ恐ろしい裏の顔を持っていたのだ、過去の暮らしのせいだけではなく本人の資質にもよる異常性愛と極めて強い屈折した承認欲求から女性を殺めて自己の世界に浸る殺人鬼なのだ。
このドラマでは事件の現場となる北アイルランドの街へロンドン警視庁から事件解決のために派遣されるステラ・ギブソン警視と地元警察、そして殺人鬼との心を消耗する心理戦をじっくりと描いている。
このリアルな話の進み具合は他のドラマではなかなか味わえないもので、1時間の枠の中に無理矢理全てを押し込んだ作りにはなっていない、そのため、きっと人によっては緩慢で退屈だと思われるかもしれないが、私はこのじっくりと展開するドラマが実際の事件とその操作の進捗状況を見ているような感じでぞくぞくした。
派手なアクションはない、かっこいいBGMに乗せての決めポーズもない、だがそこが良いのだ。
早い内に殺人鬼は容疑者としてどこの誰であるかを特定されるのだが、このドラマの見どころはそこからが本番、警視とお互いの心の闇を突き合うやりとりは物静かなのだが深くえぐるように痛いところを突いてくる、まさに心理戦だ、仮に私がこの対決の片方であったとするなら・・・そう考えるだけでぐったりと疲れてしまう。
見ていてこの先はたぶんこうなるだろうという予想は立つのだが、その読みは何度も外れてしまった、特にラスト、その結末は私にとってはまさかのものだった。
都合の良い時にヒントが棚ボタで落ちてくることもなく、後味はあまり良くないドラマだが、丁寧に作られたお薦めの作品である。
ステラ・ギブソン警視を演じるのは「Xファイル」のスカリー捜査官役でお馴染みのジリアン・アンダーソン、そして、個人的には北アイルランド警察の警視長役を演じるジョン・リンチも渋くて良い俳優さんだなと思う。