2015年10月8日木曜日

ノックダウン

甥っ子がふられたと愚痴っている。

今年の春頃から一応付き合い始めた同い年の人がいたのだが、だけど恋人というまでの仲にはなれず、プレゼント等は一切しないようにと何度も念を押されるし、いつまで経っても食事は割り勘で奢らせてくれないし、夜もそれほど遅くないのに帰ってしまうし、これといった進展が無いので思い切って訊いてみれば答えにくそうにしつつも「あなたはいい人だけど、恋人などにはなれない」とはっきり言われたらしい。

その理由については見た目の問題だという、甥っ子は醜男ではないがスッキリ爽やかな部類というわけでもない、相手の人は人間は中身だということも理解しているがという前置きを置いた上で見た目も大切なのだと答えてくれたという。

そうか、なるほど、ならば仕方がない。

内面の重要さはいつか外見の良し悪しを追い越す日は来るけれど、それでも見た目が重要だと思っている人はいるだろうしその考えを誰も否定できないと思う、相手の人は恋人になれない理由を甥っ子をなるべく傷つけぬように最大限配慮しつつも正直に答えてくれている。

きっと今までも婉曲に甥っ子を遠ざけようとしていたのではないかという気がする、甥っ子にはそれがわからずにいたのではなかろうか。

実は甥っ子は愚痴れば気が晴れる程度ではない、ノックダウンというほど落ち込んでいる、好きな人から見た目(要するに顔)が好みではないと言われれば相当きついだろう、だが甥っ子には頑張れなどとは思わない、溜息吐くのに飽きるまでぐったり落ち込んだらまた元に戻ればいいのだと思っている。

そんな経験など私も何度味わってきたことか、若い頃はこの世の終わりだとさえ思ったこともあるが、それでもちゃんと腹は減るしメシも食う、夜も更けるし朝も来る。

放っておけば元に戻れるから大丈夫なのだ。