常連メンバー4人に加えて誰かが誘った人が来ていた、市内の商業施設内で似顔絵を描いていたことがあるという人だった、引退して数年になるという。
面白い話が聞けた、客の7割は女で、男は連れの女が「あなたも描いてもらえば」と誘うとモデルになるが、1人でやってくる人は少なかったという、出来上がりにクレームをつけてくるのは圧倒的に女で男は1人しかいなかったらしい、「私はこんなじゃありません、ほら、ここはこんなふうになっていません、もっとこんな感じですよね？」と具体的に言われて描き直したこともあるという。
クレームは始めた当初に特に多く、何故だろうとよく考えたら相手が欲しがりそうにない欠点を際立たせて描いたりしたのが原因だと知り、相手がどう描いて欲しいのかを探って描くようにしたらクレームは極端に減ったらしい、なるほど、これは分かるような気がするし、ただ単に描くだけではない難しさがあるのだなと思った。
似顔絵料は1,000円だったが500円にしてくれと値切られたこともあるのだとか、その上で2枚を違う角度から描いて合計で1,000円にしてくれ、と。
困ったのが税金関係、始めてすぐの頃は似顔絵1枚でほぼ1,000円の収入で、描けば描いただけ増えるので喜んでいたけれど税金のことなど全く頭に無く、翌年の申告でギョッとすることになり世の中の厳しさを再認識したらしい（笑）。
他にも、客待ちの間に有名人を見かけたり、近くでケンカが始まったり、酔っ払いにからまれたり、等々。
もう似顔絵描きはしないのですかと訊けばたぶんしないと言っていた、今は某ドラッグストアの倉庫でチェーン店向けの出荷作業をやっていて収入が安定しているので戻る気はないらしい、あと11ヶ月頑張れば正社員になれるのだという、ううむ、それはよかった。
元似顔絵描きさんは私の顔をジッと見て言った、「描きにくい顔されてますね」・・・、そうなのか（！）。
それにしても似顔絵を描くというのは凄いことだと思う、私がまともな絵など全く描けぬので余計にそう思うのかもしれないが特殊能力だと思っている、見たままを描けと言われても難しいのに、相手の特徴を上手に抽出しササッと描いてみせるなど超能力ではなかろうか。
人それぞれに何か優れた能力はあるらしい、私に絵を描く能力はないけれど、はて、一体何があるのだろう、いつかそれを存分に発揮できればいいのだけれど。
