クリスマス色も一掃されたいつものディスカウントストアは正月色で染まっていた、店の入口から奥まで正月用品があちこちに目立っている、やはり物量と金額においてクリスマスの比ではない。
魚売り場もエビや数の子、冷凍カニといったものがたくさん並んでいたが、日頃の食材も普段よりはスペースが狭いながらもちゃんと並んでいた、その端には赤ナマコ、私と同じように隣でそれを覗き込んでいた2人連れの女性のうち若いほうが「うわぁ、これどうやって食べるの?」と気味悪そうに言うと年配の女性のほうが「切って洗ってポン酢で」と省きすぎた説明を呟いた。
そうだ、私も最初にナマコを見た時は本当に食い物なのかと驚いたがまさに珍味な海産物なのだ、好きな人は旬の冬になると喜んで買いに来るらしい。
最初に食べたのは誰だろう? ナマコの存在は広く知られていたと思うが食べようという発想はなかなか湧いてこないと思う、最初に口にした人は相当な勇気を必要としただろう、なにせ誰も食べたことがない段階で、もしかしたらフグのように毒があって中毒を起こすかもしれないのだ、なにしろ見た目がああなのだ、コリコリと噛む間もドキドキしただろう、この場合の第一発見者とはナマコが食べ物として成り立つのを発見した人となる。
他にも世の中には「どうやってこれを発見したのだろう?」と思う事例は数多い、ナマコもそうだが薬にも存在する、たとえば西洋医学はクラーレやウワバインといった原住民が矢毒として使っていた毒物から薬を作り出したのだが、その矢毒に使われていた植物は現地では普遍的に見られるもので、だが、そこに毒素が潜んでいて効果を把握し、抽出の上で矢毒に仕上げて狩猟に使っていたという現実も毒の第一発見者がいるからこそである、その人がいなかったらクラーレもウワバインもずっと遅れての発見となり別の名前で呼ばれていたかもしれない。
その人はどうやって毒の存在に気付いたのだろう、不思議である。
さて、さきほどの女性2人のうちの若いほうはナマコを気味悪そうにしながらも指で突いて「あ、これ、生きてるんじゃない!? ほら、なんか動いてない!?」と興味津々であった、たぶん、そのうち好奇心から食ってしまうだろうなと思う、最初は恐る恐る、次第に慣れてごく普通に、そして最後は旨そうに食うのだ。
見た目が良くないし価格も高めな今が旬のナマコ、調理は簡単で栄養たっぷり、そして、第一発見者と同じドキドキ感も楽しめそう、興味があれば是非。>皆様