2017年9月4日月曜日

真相は深い深い闇の奥

今までいろんなドキュメンタリーを観てきた、テレビにしろ映画にしろ、まるで観光案内のような美しい風景ばかりのものもあれば、人知れず枯れ葉の裏で命を紡ぐ虫たちのものもある、そして今回のように核心に近づく度に怖さを感じるものまで様々だった。

この「キーパーズ」は50年近くも昔に起きた修道女殺害事件に潜む謎と闇を解き明かそうと奮闘する人たち、そしてその経過と展開を記録したものである。

事件の舞台はアメリカのメリーランド州ボルチモア、殺害された修道女の名はキャシー・セスニック、彼女はで誰からも慕われる優れたカトリック高校の女性教師でもあった。

そのカトリック高校では多くの女生徒が神父によって性的虐待を受けていて、神父から呼び出さるということは虐待を受けることだという暗黙の了解が生徒の間では成り立っていた、キャシーはある日それに気付いてしまい、そして行方不明となり遺体で発見された、キャシーに何が起こったのかを当時性的虐待を受けたという本人と関係者の証言から紐解いて行くのだが、謎解きが進むにつれ当時は圧倒的な力を誇っていたカトリック教や問題の神父の闇の部分が明らかになり始める。

もちろん、このドキュメンタリーはカトリック教を批判するものではない、あくまで神父の仮面を被った悪人と、その関係者らによる出来事の真相を探るドキュメンタリーである。

ただ、そうは言っても人間はイメージに重きを置く生き物なので、観た側は少なからずカトリック教に対するマイナスイメージを持つかもしれない、まあ、その点は少し考えれば宗教批判ではなく事件に関するドキュメンタリーなのだとすぐに気づくはずなので問題はないとは思う。

今だからこそ制作と放送が可能なドキュメンタリーなのだろうという気がする、たとえば事件発覚直後に制作されていたらどうだっただろう、力を持ったカトリック教と敬虔な信者たちで成り立っていた社会においては批判され封殺された作品かもしれない、いや、その前にやはり制作すらできなかっただろう。




ここに日本語字幕版の予告動画を貼っておくことにする。

50年近くは経ったとはいえ当時の被害者が画面に登場し自らを語るというのは大変勇気がいることだろうし、支援する側の努力も並々ならぬものがある、そして殺害されたキャシーを今でも慕う気持ちに心打たれる。

フィクションではない事実のドキュメンタリーだからこその怖さがあり、現在においても真相を暴こうとするのは危険なことではないかとさえ思わせる。

そんなドキュメンタリー、もし興味があれば是非どうぞ。>皆様