2016年11月28日月曜日

新月前の満月

今日の仕事上がりはなんとなく星も見える程度に晴れた午後9時過ぎ、チラチラと瞬いて見えていた星はカペラだろうか。

疲れてはいないが腹が減ったので昼過ぎの仕事上がりのように歩数稼ぎの徒歩で帰る気がしない。

なので地下鉄で帰ろうかと思ったが混んだ渡辺通りをノロノロと自宅最寄りのバス停を通るバスが曲がって来ようとしているのが見えたので今夜はバスで帰ることにした。

バスは席が半分ほど埋まる程度だった、後部座席に座って混んだままの中洲あたりまで窓の外をぼんやり見ていた、私の前には若い2人が座っていて、窓側には女性、通路側は男性だった。

女性は「ほら、あれ」などとしきりに男性に話し掛けるのだが反応が無い、眠っているわけではない、そっぽを向いているのだ、ケンカでもしたのか女性の声を無視し、じっと前か反対側を見ているだけだった。

「みんな寒そうだね」と窓の外の人たちを見ながらまたも女性が言う、でもやっぱり反応はない、知らぬ顔されたままだった。

バスがもうしばらく走ったところで「ほら、月が映ってる、満月かな?」と対向車線側のビルの上の方を見上げて言った、今日は新月前で、しかも真っ暗なその月は日の出と変わらぬ時刻でしか昇って来ないのでその時点で見えることはない、満月とは何だろうと思って私も見上げてみれば・・・ビルのガラスを透かして丸い笠の照明が灯っているのだった、なるほど、電球色で薄暗く、色合いと形からガラスに映った満月に見えなくもない。

女性はそれきり何も言わなくなった。

混んでいた道もスムーズになり、目的とする幾つか先のバス停で私は降りた、残りの乗客は僅か数人だった、終点も近い、全く楽しくなさそうだったあの2人はどうするのだろう。

バス停から自宅まで歩く途中では弱いながら南寄りの風が吹いていた、昼間の北寄りの風と違ってなんだか湿っぽくて冷たい、明日の明け方は今朝よりもずっと冷えそうである。

暖候期予想を確認すると来月半ばから平年並みになり、その後の冬季全般は低めで推移するという予想が更新されても内容変わらず繰り返されていた。

寒い夜の仕事上がりはやはりバスより地下鉄にしようと思う、バスは暗い外の景色も、車体の軋みも、なんだか寒々しいのだ。