2016年4月30日土曜日

洗濯物は仁丹の匂い

懐かしい匂いにハッとした、うちの祖父が丸い形の容器からジャラジャラと音をたてながら数粒を手のひらにとり、そして口の中へ。

銀色の粒の仁丹である、女よりも圧倒的に男が愛用していたのはタバコ臭を消すためだったのだろうか、なので仁丹の匂い=父ちゃんやじいちゃんの匂いというイメージが強い。

そして今日は抜き打ちで訪れた甥っ子の部屋にその匂いは漂っていた、いや、充満していたといったほうが正しい。

仁丹を食べているのかと訊けば仁丹がよくわからないらしい、もしかして名称も分からぬ物を口に入れているのかと思い驚いたのだが仁丹などどこにもなかった。

では、この部屋の匂いは何なのだと訊くと洗濯洗剤か柔軟剤の匂いだと言う、今の世の中洗濯でいろんな香りを楽しむという人は多いが、仁丹の匂いのする洗剤など聞いたこともない。

変わった洗剤もあるものだとパッケージを見てみるとどこにでも売っている品で、柔軟剤もそうだった、なるほど、両者の香りが混じると仁丹の匂いになるのかと妙に納得した、洗剤がなんとかグリーンの香りで柔軟剤がなんとかハーブの香りだった。

なんとかグリーン+なんとかハーブ=仁丹の匂い、か。

味覚に関してはバニラアイスクリームと醤油でみたらし団子の味によく似るという何かの拍子に偶然足した結果で発見したであろう面白い組み合わせはいろいろとあるのだが、匂い(香り)についても同じようなものはきっとあるのだろう。

どちらかと言えば悪臭に偏りやすいという気がしないでもないが。

「この部屋のような匂いのする銀色の粒で気分をすっきりさせるものだ」と仁丹を説明した、昔は大人の男がよく使っていたとも言った、興味からきっと買って試してみるのではないだろうか、甥っ子はそんな顔をしていた。

そもそも匂いが充満するのになぜ乾きの遅い室内に洗濯物を干すのだと訊けば、ベランダに干すと鳩がやってきて糞をするので汚れそうだからと言う。

そうか、鳩か、結構しつこいので早めの対策をしっかりとやっておかないと巣作りを始めるぞと教えた、甥っ子は鳩が住み着かぬようにベランダに置いてある物を処分すると言っていた。

そうだ、それが良いと思う。