昔は「バカの日」という呼び方が一般的だった、4月1日のエイプリルフールのことである、ちょっとした冗談で親しい人らを驚かせたりする大人のイタズラも笑って許してもらえる日として浸透している、こういった日がいつ登場したのかはわからない。
生前、うちの父も仕事から戻ってくるなり「100万円が当たった!」と買いもしない宝くじの当選を口にし、これまた普段は買いもしないお菓子なんかを買ってきたりするものだから私を含めた姉らは信じて大喜びしていたこともあった。
当選金額が100万円だったり、お菓子がケーキではなく御萩や羊羹だったのが昭和1桁生まれな父のリアルな冗談で、その真相を知った時はガスが抜けるようにがっかりはしたが「なーんだ」と充分に笑えた。
そして今日、甥っ子は朝になって親しい同僚にメールで「事故った」と悪趣味な冗談を流した、リアルさを演出するために30分ほど電話の電源を切って連絡がとれないようにまでした、甥っ子は電源を切っている間に「どこで!?」などといった反応が返ってくると予想し、それは当たった、そうなるのは当たり前である。
メールでの返信ではなく直接電話もかかってくるだろうとも予想した、もちろんこちらも当たった、こちらのほうが多かったのである、そして、このリアルさを演出する電源オフの30分が騒動の始りとなった。
知らせを受けた同僚は連絡を試みるも繋がらない、なので会社に報告を入れた、その報告は上司にも伝えられ、本人との連絡がとれず詳細が分からないので私の姉(甥っ子の母親)に連絡が来たのだ、姉は事故のことなど知らぬので驚いて今度は仕事中の私へ連絡を入れた、当然、私も驚いた。
甥っ子は30分ほど経って携帯の電源を入れると大変なことになっているのを知ってエイプリルフールの冗談だと同僚や上司に詫びたのだが・・・、この後各方面から吊し上げをくらったのはこれを読んでいる人には当然の成り行きとして分かっていただけるだろう。
仮に、他の人らが笑って済ませたとしたら私は他の人らの分まで烈火のごとく憤って甥っ子が泣きすぎて乾燥するくらい罵倒したと思う、が、今回は会社からの厳重注意や同僚からの苦言と姉や姪っ子からの厳しい叱責があるので私からはそこそこに抑えた。
甥っ子は来週どんな顔をして出社すればよいのだと落ち込んでいる、バカな甥っ子だ。
エイプリルフールのみならず、冗談は笑ってサラリと流せるものを程々に口にしピシャリと決めるのが洒落ていて楽しいのだ、そこを外すと失敗する。