仕事が終わって姉のうちに仕事用のついでに買った塩鮭を持って行くと甥っ子が来ていて台所でカレーを食べていた、仕事が遅くなったので自分で作る気にもなれず母親(つまりは私の姉)の所に晩メシを食べに来たのだという。
そのくらい外で好きなものを食えと言うと給料日前なので金が無いらしい、ちなみにお前は今幾ら持っているのだと財布を覗くと1,200円ほどだった。
そこそこいい給料貰っているくせに給料日までのあと残り丸2日間暮らすのに所持金はたった1,200円なのか、どうしてこんなに無いのだと訊けば飲み会が重なったせいだとボソボソ答える。
・・・ああ、何をやっているのだ我が甥っ子は。
とにかく今日は塩鮭なのだ、仕事場で切って凍らせていたものを姉に渡すと大好物だと喜んでくれた、そう、うちの姉は塩鮭なら毎日でもいいと言うほど好きなのだ、熱々のご飯と塩鮭の相性の良さは誰もが知っているだろう。
持って行った量がかなり多かったので私の分はちゃんとあるのかと心配して訊いてきた、もちろんあるのだ、ただし塩鮭ではない、私は塩鯖をしっかりストックしている、姉は塩鮭派だが私は塩鯖派なのだ、塩鯖なら毎日でも構わない、どうしてこんなに美味しいのだろう。
まあ、実際に毎日食べるのは食生活が偏るのでしないけれど。
かなり昔、まだ母が元気だった頃に家族で別府に泊まった翌朝、朝食が和洋どちらも揃えてあるビュッフェ形式だったのだが、姉は焼いた鮭(低塩)を数切れ、私は焼いた鯖(同じく低塩)を数切れ取ってきた時に「ほら」と鯖を一切れ渡そうとすると「鮭のほうが好きだからいらない」と言ったのだった、逆に姉は「鮭美味しいよ?」と食べぬのかという表情で訊いてきたのだが私は鯖のほうが好きなのだと言った。
姉は「あら、そうなの?」と言いたげな顔をしていたが。
そんなことを思い出しつつ更に小分けにして冷凍庫に塩鮭を収める姉を見ていると横からカレーを食べ終わった甥っ子が「僕は肉がいいなぁ、牛肉。」と尋ねもしないことを言う。
給料日が来たら好きなだけ食え。
そして、たまには母親に焼肉くらい連れて行ってご馳走しろ・・・と、これは後からメールでプスリ、ちゃんと「はい」と返事が来たのでそれで良し。