2016年2月14日日曜日

上着の裾を

いつもより遅めに仕事を上がり一旦の帰宅もせぬまま実家町内の集まりに寄った、来月上旬の観梅会の話し合いである、参加者は主に町内のお年寄りで、他は付き添いで身内が一緒に参加することもあるというもの。

目的地は太宰府で、第一候補日、第二候補日共に3月上旬の平日と決まった。

その集まりでの話し合いも終わってしばしお茶とお菓子で顔馴染みさんらと話をする、その中で不思議な話を聞いた。

3日前の11日(建国記念日)に町内A氏は福岡市から外れた山へと息子さんと2人で車で行ったという、時間にして片道40分ほどでそう遠い場所ではない、山の周囲の道路沿いに生える山菜(ふきのとう)を採りに行ったそうである、その場所はA氏の父親から教えてもらった場所とのことで毎年採りに行くと言う。

車を停めるのに充分な空き地があるのでそこに停め、レジ袋片手に舗装された上り道を歩きながら山菜を採り、30分ほどの場所でまた折り返して戻って来るのがいつものパターンらしいが、今年は折り返し地点で近道をすることにしたらしい。

車を停めている場所からは緩いカーブの上り道の反対側での折り返し、時計で言うなら6時の位置から弧を描いて12時の地点まで行き、そこから逆に折り返して戻ってくることになる、そこで12時の地点から真っ直ぐに6時の位置まで藪を抜けて戻ろうとしたのだった。

藪と言っても木々や草をかき分けて歩むような場所ではない、獣道のようなものが通っていてそこを歩けば楽だという、先を歩くのはA氏、藪もそろそろ終わりで車を停めている場所の風景がもう目の前という地点、あとは幅50cmくらいのコンクリートで整備された溝をひょいと飛び越えて道路に降りるだけという段階。

そこで右側の上着の裾をかなりの力でグッと引っ張られて振り返った、すぐ後ろに息子さんかと思ったら3mほど離れていたのでそれはない、不思議に思いつつも段差1mほどの道路へ飛び降りようとした時、音もなく凄い勢いで自転車(スポーツ車)が5台連なって前を横切り下って行ったという。

寸でのところで自転車の前に飛び降りてぶつかるか、それを回避しようとした自転車側が危ないことになるかのところだったという。

帰宅後、その時のことを思い出してみると、上着の裾をグッと引っ張られなければそのまま飛び降りて大変なことになっていただろうとゾッとしたと言う、昔は亡き父親と一緒に来ていた場所でもあるので、もしかしたら父親が守ってくれたのかもしれないとA氏は思っていると言う。

「枝か何かに引っかかったのでは?」と上着の裾について訊いてみたが明らかに後ろへ引っ張られて上体が少し反るほどであったらしい、息子さんは何も気付かなかったらしい。

ありそうで、なさそうだが、・・・いや、やっぱりありそうな不思議な話である。