2016年2月11日木曜日

「カツラが」とは言えず

片手に提げていたのはドラッグストアのレジ袋、私は仕事帰りに寄り道をしてマスクとメントールの飴、そして消毒用エタノールを買って休日で人の多い地下街へ合流しようと下りエスカレーターに乗った。

私の前には同い年くらいの中年男性、何気なく見ていたのだがすぐにその人の頭部に違和感を感じた、どこかがおかしいのである、よく見てみると後頭部のあたりで髪が段になり、一部にクセがついて浮いているのだ、カツラである。

距離にして2mほど、パッと見で変だと判るくらいなので地下街の人混みでは個々の距離が狭まればもっと多くの人が乱れているカツラに気付くだろう。

教えるべきだ、そう、教えてあげたほうが良い、気付かぬまま大勢の人の中を歩くより同年代の中年に指摘されたほうがきっとマシではないか。

私が「もしもし」と後ろから声を掛けるとその男性は「はい」と振り返った、「カツラが乱れていますよ」と言いそうになったのだがストレート過ぎるだろう、まあ、それでもいいのだが「髪が乱れていますよ」とだけ言った。

男性は「えっ」と左手を後頭部に当てて撫で付け、エスカレーターを降りて右へ、私は逆の左へ向かった、お互い振り返ったとしても川のように流れて行く人々らに遮られてもう見つけられなくなっていたのではないか。

男性はギョッとしただろうが言ってよかったと思う、だが、過去には逆に言わなければよかったと思う事もあった。

梅雨時の午後、雑誌を手にジュンク堂のレジに並んでいた時、私の前で順番を待っていた女性の服には後側にファスナーがついていたのだが、それが5cmほど下がっていて背中が少し開いていたのだった、さすがにレジの列で指摘されると恥ずかしいだろうから黙っていたのだが、後から精算を済ませた私がエスカレーターで下に降りると100円ショップに先ほど女性がいたので「背中、少し開いてますよ」と言うと痴漢にでも出くわしたかのように嫌な顔をされ逃げるように女性は早足で去って行ったのだった。

私が年配の女性などであれば問題はなかったのだろう、中年男に指摘されてゾッとしたのかもしれないが、気付かぬまま大勢の中を歩くよりはマシではないか。

かくいう私もうっかりズボンのファスナーを閉め忘れて(汗)歩いていたことがあり、前からやって来た少し年下らしき男性が指を差しニッコリとしたので何だろうと見て気付いたということもある、「うわっ」と恥ずかしかったがサッとファスナーを上げて何食わぬ風を装い歩いたのだった。

まあ、これからは女性への指摘は慎重に、且つ、婉曲にするだろうが、同じ男性にはそのままに近い形で指摘するだろうし、そうしたほうが良いのだと思っている。