2016年2月15日月曜日

耳元を覆う

今夜は冷えている、一昨日の同じ時刻と比べておおよそ15度ほども低いのだ、こう極端だと陽気に合わせる体がおかしくなりそうである。

外は時折り風の音が鳴って雪が降っている、先月の大寒波の時のように積もったり凍ったりはしないだろうけれど。

この冷え込みのせいで首回りが寒い、なので部屋着にしているフリースもファスナーを首元まで上げて襟を絞っている、体幹部よりも首回りは寒さに敏感なのは誰もが経験則として知っていると思う。

中学生の頃、もう梅も満開という季節にクラスの友人らと県南部の親戚の家に泊まりがけで遊びに行ったことがある、目的は梅の花見だったが友人らと一緒ならどこでも楽しいという年頃で、そこへ親戚の叔父さんが弁当を使って花見に行くから一緒にどうだと誘ってくれたので友人らと一緒に行くことにしたのだった。

叔父さんの家は昔の造りで部屋が広かった、そして寒いのだ、内陸部なので日が暮れると気温がストンと落ちる、夜の寒さは春のそれではなくまだ冬のままだった。

なので床に就いても寝付けない、首から上が寒いのだ、体はポカポカなのだが。

様子を見に来た叔父さんが私らを見て「寒いか?」と笑う、一旦どこかへ行って戻って来た叔父さんはバスタオルを人数分持っていた、何をするのかと思ったら枕の上に敷き、マフラーのように耳元を覆って両端を首のあたりで重ねたのだ。

途端にほんわかと温かくなり、すぐに寝入ってしまった、よく晴れた夜のことだった。

翌朝、叔父さんが「耳元を覆うと寒い日でも暖かいよ」と教えてくれた、布団を引っ張りあげて中に入っても同じように暖かいが息苦しくなるのでタオルが便利だとも教えてくれた。

確かに、布団を深く被れば耳元が隠れてとても暖かい、が、ほどなく息苦しくなり顔を出してしまう。

今は暖かい都市部の気密性の高い部屋に住んでいるのでその時のように寝床で寒い思いをすることはないのだが、それでも寒い夜に耳の冷たさを当てた手指で知るとその時のことを思い出すのだ。

叔父さんはとうに亡くなってしまった、あの大きくて広い一軒家はまだ残っていて息子さん家族がお住まいになっている、今は風でガタガタと鳴る窓はアルミサッシになり、一泊した部屋はフローリングにリフォームされている、もう夜が冷え込んでもタオルで耳元を覆うことはないだろうと思う。

それでも、いつかどこかで、寒い夜に寝付けないことがあればお試しあれ、すぐに寒さが和らいでくれるので。>皆様