ゲイでこの人のファンは多い、ファンどころか崇拝している人だってそう珍しいものではない、それほどこの人の曲と歌詞には人を惹きつける強い魅力がある。
私は熱烈なファンではないが好きな曲はそれなりに多い、テレビでもお馴染みだったヒット曲から、聴けば「この曲知っている」というもの、はたまた他の人に書いた曲までこの人による曲を耳にしたことがない人を探すのは難しいかもしれない。
そんな膨大な数の中でも私ならこの曲「波の上」だ、ライブCD「歌暦」に収録されている最後の曲である。
酒場のカウンターでドライなジンに慰めてもらいながら終わった恋と心情をひとつの情景として思い描く「遠いエデン行きの貨物船が出る、帰りそこねたカモメが堕ちる、手も届かない波の上」という行がなんとも切ないではないか。
恋を失った女が遠ざかるそんな貨物船をただ静かに見遣るだけで、ふと、目に留まったカモメの哀れさの中に自分を見付け、全ては手も届かぬ波の上なのだとまたやりきれぬ悲しさと寂しさの淵に沈んで行くのだ。
女だろうが男だろうが、この曲と歌詞に在りし日のことを思い出す人は間違いなくいる、私もそうだ、1度だけではない、何度あったことか。
ところで、「傍にいてくれるのは優しすぎるタンカレー」という部分、その「タンカレー」=「Tanqueray」であり、これはイギリスのジンのことである、最初聞いた時は何のことか分からずにいたのだった。
タンカレーという名の人だとか、タンを使ったカレー(料理)だと思っている人もいるらしい、まあ、無理もないが料理のほうには笑ってしまった。
失恋した女の傍にカレーというのがなんとも可笑しかったので。