2017年11月8日水曜日

スズカケノキの下で

全18話の終了も近いWOWOWで放映中の「ツイン・ピークス The Return」(2017年7月22日のブログ)、25年前の初代ツイン・ピークスと比べると時代なりの新しい要素がふんだんに取り入れられていたりで3話目あたりから俄然面白くなってきたのだが、内容が予想を遥かに超えた展開を遂げるので見ているこちらの脳がなかなか追いつけず悩んだこともあるが総じて楽しめる内容となっている。

一部には全くの不評だが、そういった人たちの中には初代のツイン・ピークスを観ていないか、観ても楽しめなかった人か、ただ単にこういったタイプの作品が全く好みに合わないかの人が多いのだろうなと感じている。

ただ、楽しめているとはいえ残念な点もあるのだ、初代に満ち満ちていた曇り空と気温は低いが湿度は高い寂しき田舎町の寒々しい風景が醸し出す陰鬱さが足りないのだ、窓辺から眺めても薄暗そうな通りと、その薄暗い通りから見える窓辺の灯りに安堵感を覚えるほどの人の少なさ、そして、そこに暮らす誰の目にも黒い何かが漂っていそうなのが分かる森の邪悪さ、そういったドラマの背景を作り上げる雰囲気が足りないのである。

そして音楽だ、初代のアンジェロ・バダラメンティによる秀逸な劇伴(ドラマ中で場面に応じて使われる曲)はそういったドラマの背景を強く盛り上げるに力を発揮したが、今回の「ツイン・ピークス The Return」でも初代の曲の一部は使われているとはいえ、その他の部分でやはり初代ほどのインパクトはないと感じている。

あまり話題にはならなかったが初代に於いて私が最も気に入っている曲がある、もちろんアンジェロ・バダラメンティ作曲で、作詞はツイン・ピークスで2人の製作総指揮のうちの1人であるデビッド・リンチ、しかも歌うは3年前に亡くなったジミー・スコットだ、この人の歌声と歌唱力でなければこの曲はこれほどの魅力を発揮できなかったと断言できる。

タイトルは「Sycamore Trees」、私は柔らかく、そして暗く、ねっとりとまとわりつくようなこの曲を一度耳にしただけで忘れられなくなってしまった、何をどう描きたいのかが明確だったデビッド・リンチと、そんなデビッド・リンチの世界を正しく理解していたアンジェロ・バダラメンティ、そしてそれを余すことなく歌いきるジミー・スコット、とてつもない組み合わせだと思う。




初代ツイン・ピークスでその曲が登場するシーンをYoutubeで見つけた、リンクを貼っておくので興味があればどうぞ。




さらにはCDからのフルバージョンと思われるものもあったのでこちらもリンクを貼っておく、あわせてどうぞ。