2017年11月2日木曜日

静寂の中では寝付けない男

夕方に友人がやって来た、最近仕事で岐阜へ行ったらしく、そこで買ったという珍しい米を原料としたウォッカ、そして炭酸とグレープフルーツジューズを持ってだ。

肴はというとうちの冷蔵庫の中に何かあるだろうと踏んで何も持って来なかった、確かに、解凍すれば酒の肴になるくらいのものはいつも入っている。

下戸な私に酒を飲ませるとすぐ寝てしまうのを知っている友人もまた下戸なのだ、旅先で美しいブルーのボトルに入った珍しい米のウォッカをちょっと楽しみたいだけなので下戸な私が相手でも不足なないという、そうか、もし先に寝てしまったら皿は洗ってくれと予め伝えた。

ところがである、先に寝てしまったのは友人のほうだった、酔っ払ったというよりは酒で気がゆったりと、体がほんわかと温かくなったのが心地よかったのだと思う、呂律が回らないということもなく、ちょっと横になるからと言った数分後には寝息を立てていた。

私はグラスに残ったウォッカのグレープフルーツ割りを飲み干し、そっとグラスと皿を台所に運に洗い終え、CDの曲が賑やかなものに変わったのを知って停止させたところ友人がふっと目を覚ました。

てっきり曲の出だしで目が覚めたのかと思ったら曲が止まったので目が覚めたのだという、何か聞こえていたほうが落ち着いて眠れるというのでもう少し落ち着いた曲のCDを選び音を小さくして再生、横になってまばたきをしていた友人は台所から戻るとまた眠っていた。

ほう、何か鳴っていたほうが眠れるとな、私はどちらかと言えばもう少し静かなほうが眠れるが、テレビを見ている途中で眠ってしまうこともあるので音が眠りの妨げになるということはない、好んで何かを鳴らしながら眠るということはしないけれど。

いつだったかラジオの深夜放送で松任谷由実が「うるさいからこそ眠くなる」と何かの話の中で語っていたのを思い出した、音楽というわけでなく何かの音が鳴っていて騒々しい中だからこそ眠くなるというのだ、うん、なんとなく分かるような気もする。

私も宅飲み会などで活発に会話する友人の傍らで心地よく眠れることがある、松任谷由実のそれはきっとそれとどこか通じることなのだろう。

今日のウォッカの友人は就寝前にラジオをつけっぱなしにしておくのだそうだ、音量を小さくしそのままにしておき、明け方に目が覚めかけた時などは目を閉じたままAM放送ではトラックのCM、FM放送ではナレーションなしの洋楽リレーを聴くのが好きらしい。

ううむ、面白い友人である、まどろみの中でのラジオとは、私もちょっと試してみようか。