2016年12月3日土曜日

首輪の無い犬

年末までは仕事の時間がいつもと違う変則的なものとなった、午後から仕事を始める日と、午後で仕事上がりになる日、そして朝からずっと仕事の日が入り乱れる。

今日は午後で仕事上がりの日、平日にしかできぬことを夕方前の時間帯を使って・・・とは思ったが特にすることもなく帰宅前に買い物を済ませることにした。

買い物もそれほどの量ではないので軽いレジ袋1つを手に提げただけである、もう少しで自宅という地点、小さな公園の植え込みのところで痩せた犬が小さなお菓子の空き箱を前足で掻いていた、ガサガサと枯れ葉の擦れる音も混じって聞こえていた。

犬は首輪もしていない雑種犬のようで右の後ろ足を浮かせていた、傷めているのだろう、いや、浮かせているというよりは妙な形に湾曲していて内側へ倒すような形で地面からは浮かせていた、生まれつきなのか、事故といった後天的な原因か、単に傷めているだけではなさそうだった。

私が歩いているのに気付いて犬はパッと離れて小走りで公園から飛び出して白目を剥くように後ろを振り返りつつ通りの反対側のビルの1階付近を飾る植え込みの傍へと逃げて行った、足がああなのでスムーズな動きではない、ぴょんぴょんと跳ねるような駆け方だった。

その植え込みのところでジッと私を見ていたが、今度はビルの入り口から人が出てきた、犬は更に怯えたように身を縮めて後ろを振り返ったが、出てきた人が片足でコンクリ地を強めに踏み鳴らすと全く触りすらしていないのに犬はキャンと叫んで今度は通りに沿って東側へ走って行った。

そこで自転車と鉢合わせをし犬はまたも驚いて飛び退いたのだったが、あまりにも驚いたのかそこに停めてあったバイクの前輪あたりに噛み付き、そして尻尾も耳も丸めて走って逃げて行った。

ひどくおどおどと怯えた犬だった、人に辛い仕打ちを受けたのではないか、およそ足も事故なのだろうとその時感じた、体に不具合がある野良犬が生き延びるのは容易いこととは思えない、なにより、首輪が無いと捕われてしまうのではないか。

人に懐く犬ならば、もしかすれば人の助けでなんとかやって行けるかもしれないけれど。

小学生の頃に今日の犬ほど怯えた犬ではなかったが植え込みの根元に隠れるように身を潜めて人には懐かない犬が通学路の途中にいた、同級生が給食のパンを千切って与えるが人の顔を凝視するだけで食べない。

同級生がパンをもっと口の近くへ置こうとすると犬はガブリと噛み付いた、当然大騒ぎになって同級生は病院へ連れて行かれ、犬を捕まえようと大人がやって来たものの、その犬はとうに姿を消していた、私はその一件で怯えて懐かぬ犬には近寄らないほうがいいと知ったのだった。

今日の犬はどこから来たのだろう、そしてどこへ行ってしまったものか、きっと誰にも懐かず逃げまわり居場所を転々を変えるだろう、不憫ではある。