2016年12月26日月曜日

別な教え方

私の部屋の隣は母親と娘さんの2人が住んでいる、娘さんは小学生だ。

今年の秋頃からベランダ側から楽器を練習する音が聞こえ始めた、私が晩メシの支度をする時刻と重なることが多かった、楽器はキーボードであろう、うるさいほどの大音量ではないので私は全く気にしたことがない。

それでも玄関先や1階のエントランスで母親と顔を合わせると「うるさくないですか?」と訊かれたりはしていた、いや、全く問題なし。

そういえば練習の音が聞こえないなと気付いたのが11月の終わり頃、音漏れが気になるのでヘッドフォンでもしているのかと思っていたら練習が止まっているらしい。

久しぶりにその母親を1階の郵便受けの前で見かけたので「進み具合はどうですか?」と訊くとそう教えてくれた、理由は「半拍長く」がどうしても飲み込めずに挫折したのだと明かした。

私は楽譜は読めない、指で「ド・レ・ミ・・・」と追うことはできるが頭の中で曲にならない、周りの記号の意味もよくわからない、なので全て足すとどういったことになるのかもわからない。

ただ、全く同じ「半拍長く」ができずに困っていた人の事例を知っている、私が高校の時の友人で吹奏楽部に入った同級生だ、私は無線部だったが、ある日早めに部活が終わったので一緒に帰ろうと友人を音楽室まで迎えに行くと「半拍長く」ができずにトレーナー役の1学年上の先輩と居残り中だった。

私は窓の外から見ているだけだった。

最初のうちは「はい! いち・に・さん・・・」などと先輩の手拍子でタイミングを取って半拍長い「1.5」を教えていたのだが、友人が演奏するとどうしても「1」か「2」になってしまい「1.5」ができないのだ。

何度も繰り返すがやっぱりできない、半拍長くの感覚がわからないのだろう、私も耳で聞くぶんには違いはわかるが、自分でやってみると「1」と「1.5」とではどれくらい伸ばせばいいのか分からないかもしれない。

そこへ現れたのが最上級生、「手拍子はダメ」とトレーナー役に言った、頭で数を数えさせると演奏の感覚を邪魔するのだと言う、今思えばいわゆる右脳と左脳のことなのだろうか。

最上級生は本来「1.5」の長さで演奏する曲の一部を普通通りに演奏し、続けて「1」で演奏し、最後に「2」で演奏した、耳で聞くと「1」と「2」はあきらかに変だ、これを何度か繰り返し「半拍長く」を教えていた。

私はそこで先に帰ったので友人がその後理解したかどうかは分からぬが、数ヶ月後はちゃんと演奏会にも出ていたので役にはたったのだろう。

私はその話を隣の母親にした、娘さんが再び練習を始めるかどうかはわからない、まあ、相当に嫌気が差して楽器には触りたくもなければ別の趣味を探せば良い。

「半拍長く」か、音楽の世界では間違いなく基礎の部分なはず、だが、理解できないうちは他所がどれだけ基礎なのだと説いても無理だと思う、たとえば「誰でも乗ってるし簡単だから」と自転車の練習を子供にさせているのもまた然りで、既に乗れる人には「どうしてそれができないの?」と思うくらい当たり前の簡単なことなのだが、まだ乗れない子供にとっては「そう言われても・・・」ということなのだ。

そして、何度も繰り返すうち急に乗れるようになって自転車漕ぎは身につく、一旦乗れるようになれば時間を空けても僅かな練習だけですぐに乗れるようになる。

娘さんの「半拍長く」も自転車漕ぎと同じようなものなのかもしれない。