近所には寺が多い、川沿いに緑も意外と多い、公園もぽつぽつと点在する、うちの近所は散歩コースの道順さえ上手に選べばのんびりと楽しめる。
午後は夕方の町内会までは中途半端な空き時間、ゆっくりは遊びに行けず、部屋でぼんやりしているだけでは勿体無い、買い物も兼ねて静かな道を選んでぐるりと歩くことにした。
にわか雨を降らせそうな背の高い積乱雲も眩しい福岡は梅雨明けしたかのようだけれどまだなのだ、日が差せば気温も上がる、だけど相対的に湿度が低かったせいか風がサラリとしていたので意外と快適だった、特に大きな楠の木の陰だと川面からの風が涼しかった。
目眩がしそうなほどのクマゼミの鳴き声の下を歩き進めば地面からピョンと飛び立っては少し先に着地を繰り返す虫がいる、ハンミョウという虹色で美しい虫、もっと間近で見たいけれどそのたびに飛び立って離れてしまう。
ついに何度目かでかなり近くからジッと見てみる、メタリックな赤と青が鮮やか、こちら側を向いたまま触覚を動かしジリジリと横方向に移動している、色彩の美麗さではタマムシよりもこちらのほうがずっと上だと思う。
その後は同じように飛び立ち、・・・ところが着地はこちらの後ろ側に回り込んだのでハンミョウからはもう遠ざかるのみ。
何時だろうかとスマホの画面で時刻を確認してみれば不在着信が1件入っている、着信音がクマゼミの鳴き声でかき消されたせいか、ハンミョウに見惚れていたせいか、それには全く気付かなかったけれど。
買い物は激安だった小松菜と食器用洗剤の詰替えとくしゃみが出そうなミントのタブレット、他に必要なものは・・・特に無い、食事の支度は小松菜と冷蔵庫の中のもので賄える。
部屋に戻れば風が無いので汗が噴き出した、水がぬるいのでそのままシャワーを浴びてから町内会へ、「小松菜が56円で安かったのよ」と近所のおばあさんが今日の出来事を話していた。
そうだ、私も買った、だが64円だった、それでも充分安い。