仕事帰りは天神に少し寄り道をした、目指すは某ベーカリー、仕事場でパートさんが「これ美味しいよ」と皆に買ってきたパンが旨かったのでどこで買ったかを聞いての今日の寄り道だ。
ところが、なんとそのパンは売り切れ、次の焼き上がりが45分後ということだったのでまた別の日にでも買うことにした。
だが、折角天神地下街を歩いているので南側まで散歩でもと歩いていると思い切り若い格好をした知人が若い子と一緒にドラッグストアから出てきたところで鉢合わせ、知人は私を見てギョッとしたふうだった、若専なので若い子は恋人に違いない、その見た目の歳の差から周りの人からは父親と息子という親子に見られるだろう。
その知人は恋人の話を仲間にすることはあっても会わせたがらない、どんな相手なのかは伏せておきたいのだと思う、だが、今日は鉢合わせで私が目の前にいるのだからどうしようもない、知人が知らぬ顔をすれば声をかけてはマズいのだろうから私も知らぬ顔で通り過ぎようと思っていたら、挨拶をしてきたので私もそうした。
若い子が「知ってる人なの?」と言いたげな感じで知人の顔を見たので「こんにちは」と声を掛けると「あ、どうも」と照れ笑いをしていた、歳を訊けば今年で20歳というではないか、スッキリとスリムで背は高く、髪は短めの七三の髪を手櫛でくしゃくしゃにしたような今風の髪型だ、いかにも若専にモテそうな可愛い子だった。
そんなくしゃくしゃの髪がとてもよく似あっていたので整えるのが手間だろうと訊けば慣れればそうでもありませんよと笑う、逆に私の髪が短いので頻繁に切らなくてはならないので大変でしょうと訊いてきた、そう、2週間おきにバリカンで短くするのだ、自宅刈りだと言うと凄く驚いたふうだった。
いや、これこそ慣れれば10分ほどしかかからないのだ。
若い子の髪型を見ていてパッと思い出したので「サボテンにマミラリア属というのがあって、その髪型に似たようなのが多い」と言うと「初めて言われました」と笑っていた、いやいや、変なことを言う中年オヤジだなと思っていたことだろう。
なんでも午後2時過ぎのその時刻から遅めの昼メシを食いに行くという、知人を指さしながら若い子に「喜ぶから一番高いのを注文してあげなさい」と言うと「はい」と返事をした。
昼メシはどこで食うのやら、振り返って並んで歩く2人の後ろ姿を見ていると本当に親子にしか見えない。
若専か、私には縁のない未知の世界である。