2016年5月28日土曜日

偶然の被写体を愛でる楽しみ

BSプレミアム(NHK-BS)から録画していた「岩合光昭の世界ネコ歩き」、今回の舞台はクロアチアだった、撮り方も編集も、挿入されるBGMもいつも通りに素敵だった、番組の〆はカメラに向かってやって来る仲良しのオス猫2匹だった、夕暮れ迫る海辺でくつろぐ猫たち、やや下から構えたカメラで写す猫の向こう側には空が背景だった。

・・・と、その空に浮かぶ薄くて軽そうな巻雲を短い針のように飛行機の軌跡が伸びて行く、そのまま残ってしまえば飛行機雲なのだが、上空の湿度が低いせいか長くは伸びずに短いまま消えて行く、なので軌跡だ、短い軌跡を引きながら飛んで行く。

画面の中ではごく小さなものだったので視聴者の中には気付かぬ人のほうが多かったかもしれない。

目的とする対象物を撮影する以外に意図せず写ってしまう偶然の被写体は生放送以外の番組ソースの中にもたくさん登場する。

今日の飛行機の軌跡だったり、画面中央で熱演する俳優2人の足元の花壇の中にチラリと見えているごみだったり、職人技が光る工房での作業風景の背景に広がる窓辺で外に出られずにガラス面に沿って右往左往する虫だという場合もある。

最も多いのはドラマの屋外での撮影、中央で演じる出演者の遠くの背景でニヤニヤとこちらを見ている通行人だろうか。

こういったものは狙って撮ったわけではないので日常の未編集の状態=1コマを切り取ってきたようなもの、それを目にする機会はありそうでなかなか無いような気がするのである。

いつだったか2時間ドラマの再放送で面白い偶然を見つけた、画面中央には謎解きをする主人公の女優、隣にはアシスタント役の女優、その2人が公園のベンチで現在追っている事件の謎解きを解説気味に展開するというシーン、謎解きの冒頭でベンチから離れた後側=A地点には若い男女がハンバーガー(?)を食べているのだが、何度目かシーンが切り替わった謎解きの中盤では先ほどの若い男女が袋を手に提げてやっと歩いてA地点に現れて座ったのである、そして袋から包んだ何かを取り出していた、多分その後で包を開けて中の物を食べたのであろう。

つまり、ドラマの進行は謎解きの始りから中盤へと進み、そして結論に達するという展開なのだが、実際には謎解きの始りは中盤よりも後に撮影されたということになる、撮り直しが発生したのだろうか。

こういった時間のちぐはぐさがバレてしまいそうな映像のチェックを飛ばしたのか、編集でミスをしたのか、その点はよくわからないが面白かった。

そんな隅っこばかり見ていては本筋が解らなくなってしまいそうな気もするが、今のところそれはない、どちらも楽しめている。

生放送でないものでもそんな具合なのだから、生放送の番組だと目にする機会はおのずと増える、特に新規オープンの商業施設の中を紹介する時などは忙しいばかりのレポーターの喋りよりも偶然の被写体のほうがずっと面白いこともある。

何気なく見ている映像の端っこや背景にチラリと見えているものを観察してみてはどうだろう、意外な発見があるかもしれない。>皆様