2016年5月26日木曜日

原因はバナナ

長いこと一緒に暮らしている2人がいる、男同士なのであくまで同居人ということになる、男女ならばとうの昔に夫婦ということである。

その片方が今夜泊まりに来た、ケンカをして顔も見たくないからだと言う。

何だろう、浮気か? 隠れた借金の発覚か? 何かそんなドロドロとした問題なのかと幾つかのシチュエーションを思い浮かべながらも原因を訊いてみて虚脱感に襲われた。

なんと、1房200円ほどのバナナだった。

バナナがどうしたというのだ、食後にでも食おうと楽しみにしていたものを先に食われてしまった・・・という幼稚なものか?

いや、少し違っていた、なんでも「バナナは逆から剥くと甘くなって美味しいからやってみてよ」と勧められたのだが、逆に剥くだけで甘くなるなんて信じられないし、実際にやってみようとしても剥きにくかったのでいつも通りに軸のほうからサッと剥いたらしい。

「やってみてよって言ったのに!」というところから「どっちから剥いても構わないじゃないか」→「剥くだけだから試してみればいいじゃないか」→「だからどっちから剥いても同じだってば」→「やってもないくせにわからないじゃないか」と、ザッと聞いた部分だけでもこんな感じのやりとりがあったという。

結局、「バナナの皮も剥けないのか!」→「そんな無駄なことしかできないのか!」で家事の話に飛び火し更にカオスな状態となり嫌気もマックスに達して「じゃ全部逆から剥いてお前が食えよ!」の捨て台詞を吐いてうちにやって来たという次第。

第三者の見解としては「かわいいなぁ」というのが正直なところである、四十路の中年男のカップルがケンカをする原因がバナナだとは。

まあ、今夜一晩外泊すれば気も鎮まっておとなしく帰って行くだろう、ケンカが休前日の夜(本人の)でよかった、捨て台詞ひとつでうちに来たものの、明日が平日で仕事なら早朝に帰って行かねばならぬので。

ケンカのきっかけは些細なものである場合が多い、何かカチンと気に触る一言でスイッチが入るのだ、この2人のバナナもそう、まあ、さすがに殴り合いまでにはならないだろけど。

それにしてもバナナの皮を剥く方向が原因だとは・・・、勝手に食われてケンカになるのとさほど変わらない。

平和である証なのかもしれない、そして、どこか微笑ましいのだ。