2015年6月18日木曜日

断末魔

昨日からの雨が一向に降り止まぬ梅雨空の下、夕方から私宛の郵便物が届いているということなので受け取りに実家に寄った、半袖から先の腕が雨に濡れてなんだか肌寒い、家の前に差し掛かり、傘を閉じるタイミングを見計らっていたらどこからともなく子猫の声が響いてきた。

はぐれてしまったのか母猫を呼ぶ声だろう、甲高い声が響いている、雨に濡れれば子猫は弱って死んでしまうかもしれない、家では飼ってやれぬが、それでもどこにいるのか気になったのでそのまま傘を手に声のする方へ寄ってみた。

はっきり分からないのだが数台並ぶ自動販売機の隙間か下か、その裏に積んである濃い茶色をしたプラスチック製のブロックのようなもののあたりなのか、なにせ近寄ると鳴くのを止めてしまうのだ、子猫なりに人の気配を感じて警戒しているのだろう。

反対側から見ても姿は見えず、肩がびしょ濡れになってしまったので諦めて実家に入った。

入ってしばらく経つとまた声が響いていた。

届いていた郵便物の内容を確認し、姉が作ったというコロッケで夕食を食べた、そのまま姪が来るまでの間しばらく台所で話をし、すっかり暗くなった頃に実家を出た、雨は降り続いているので再び傘を差した。

夕方ほどではないがまだ子猫の声が時折響いていた、やっぱり自動販売機のあたりから聞こえるのであちこち覗いてみたが暗くなっているので余計に見えない、ブロックのほうを腰を落として覗いてみるとキラリと光るものが見えた、子猫の目だった。

子猫は一番下のブロックの穴の中にすっぽりと潜んでいたのである、本当に小さな子猫。

親猫はどうしたのだろう、どうかすればあの子猫を取り出せるだろうかとキョロキョロしたところで子猫が鳴いた、鳴いたというより叫びに近い声なのだ。

何事かと思って再びブロックの穴を覗くと何か動いていたがフッと暗い空間だけになったような感じがした、立ち上がって見てみるとイタチが子猫を咥えて引きずるように走り去って行くのが街灯に照らされて一瞬見えた。

実家周辺はアスファルトとコンクリートばかりだが隙間が多い、いつからか目立つようになったイタチはこんな街の中でたくましく暮らし自由に行き来している。

雨樋を通じて屋根の上を走り回ったり、うちの実家の狭い庭をサッと横切ったり、ごみの持ち出し場をうろついていたり、季節を問わず暗くなるとイタチは快活に活動している。

今日の子猫はかわいそうだったが仕方ない、ああ、親猫はどこにいるのだろう。