「カラスと」ではない、「カラスで」なのだ。
私が仕事から帰宅した後に近所のスーパーやディスカウントストアへ行く途中では下校時間を迎えた小学生らによく出くわす、校門から騒ぎながら一斉に出てくるので相当賑やかである、校門から遠ざかるにつれ右へ左へと曲がって行く子らが集団から抜けるので騒々しい列は徐々に寂しくなっていく。
そこから離脱した2人が私が行く方向の同じ道の上で立ち止まっていた、私のいるほうに背を向けて前を見ている、なんだろうと思っていたらカラスだった、街の中のどこででも見掛けるハシブトカラスだ。
そのカラスが1羽だけ通りの端を歩いているのだが、子供が2人いるので距離を保ったままカラスも立ち止まり顔を横に向けて片目でこちらを凝視していた、すると、子供のうち1人はその場から引き返して遠ざかり、もう1人は立つ位置を左へ少しずらしたのだった、カラスとの間には電柱が立っている、その子は電柱の陰に意図的に入ったのだ。
カラスは横方向へ移動した子供が電柱の裏側を通過し再び陰から出て来るのを待ったが隠れたきり変化がないので自ら横へ移動して陰にいる子の姿を確認した、すると、その子は逆方向へ位置をずらして再び電柱の陰に隠れたのだった。
カラスは一層不安になったのかまたしても自ら横へ移動して子供の姿を確認した、子供の体の幅が電柱にすっぽりと隠れているわけではなくそこに立っているのが分かるので余計に何をしているのだろうかと気になるのだと思う、そしてその子はまたもや逆方向へ移動し電柱の陰に隠れた・・・と思ったらカラスが覗きに出てくるであろう電柱の横めがけて小石を放り投げたのだ。
案の定カラスが電柱の向こう側からこちらの姿を見ようと顔を出したところへ小石が転がったので腰を抜かすほど驚いて飛び去った、カラスの賢さを利用して子供らはドッキリを仕掛けて遊んでいるのである、カラスに小石をぶつけようというものではない、あくまでその近くにコツンと転がすのが目的のようだった。
叫びながら飛び去るカラスをその子ら2人は笑っていた、ほう、妙な遊びを思いついたものだ。
鳩だとこうはいかない、猫も用心深いのでカラスと同じような行動をとるだろう、犬なら・・・んん、わからない。
それにしても移動する子供が電柱の陰に隠れた後に再び進行方向へ登場するのを予測しているカラスのなんと賢いことか、うるさくてごみを荒らすので好きではないが、あの賢さだけは本当に感心する。