2018年3月7日水曜日

私だったらボロでも一軒家のほうを選ぶ

甥っ子が引っ越しを考えている、理由は苦情が寄せられているという管理会社からの連絡だそうだ、残業で帰りが遅くなった日や、飲みに出掛けた週末などの帰宅後の音がうるさいと他の部屋の住人から苦情が出たのだという、まあ、他の部屋とは階下のことではあろうが。

私は新しい部屋を探す甥っ子の隣でPCの物件検索画面を見ていた、今の部屋同様に私が保証人になるのは間違いないからである。

検索の条件として沿線から駅を複数選び、部屋数と家賃といった基本的なものと、バス・トイレ別や室内洗濯機置き場など細かいものを指定していた、結果は200件ほどで甥っ子と私はおすすめ順にひとつひとつを見ていた。

その中に一軒家の物件を見つけた、平屋の瓦屋根に築48年という古さが漂っている、昭和そのものの住宅だ、外観がとても地味で、外壁に補修した跡がはっきりと残っていてボロに見える、私はそれを指差して甥っ子にこれはどうだと訊いた。

反応の第一声が「えー!」である、私は笑った、その反応の理由が分からないわけではないからである、昭和のドラマで「あなた、いってらっしゃい」などと仕事へ向かう定年間近な夫とそれを送り出す妻の玄関でのシーンがよく似合いそうな住まいなのだ。

だが、内装はリフォームされていて2部屋のうち1部屋はフローリングになっている、元は両方とも間違いなく和室だったであろう。

トイレも洋式だし、風呂はシャワーもあるではないか、なによりこれだったら真夜中に帰宅してドスン!などと音をたてても一軒家なので足音での騒音トラブルは発生しない、その上で甥っ子に「それでも苦情を言うのがいるとすれば地底人くらいだ」と冗談を言うと一寸の間を置いて「地底人って本当にいるんですかね?」と真顔で訊いてきた。

いないよ、そんなもの。

甥っ子がチョイスしたのは築8年の8階建てマンションでフローリングの1LKDだった、不動産屋に連絡して見学に行ってもいいかと私に訊くので好きにしろと言った、もう頭の中はどこかへ引っ越しする気満々なのだ。

甥っ子に勧めはしたものの、私がその古い一軒家に引っ越したくなってきた、今の住まいで苦情うんぬんはないけれど、夜更けや早朝に出掛けたりシャワーを浴びたりするのはやっぱり気を遣うものだ、まあ、いつか何かのきっかけで思い立ちでもしたらそれと同じような物件を探してみようと思う。

それにしても最近は入居に際し保証会社のりようが必須となっているところが多い、近くに身内が住んでいて保証人になっていたとしても保証会社を求められるケースがあるらしい、部屋を借りるにもいろいろと厳しくなっているようだ。

まあ、部屋探しに関しては甥っ子が納得できる部屋を見つけばよい、家賃滞納で保証人である私へ連絡など来ないのであればそれでよいのだ。