2018年3月20日火曜日

わざわざ不便な店を選ぶ理由

近々久しぶりに本を買う、雑誌ではなく本をだ、あいにくと店頭には無かったので取り寄せてもらうことにした、入荷すれば電話で連絡してくれるそうだ、特に珍しい本ではないが発売直後に置いた数冊が売れてからは新たに取り扱いはしていなかったという、そこは大手書店のように広いフロアを有した店舗とは違う町内にある小さな書店だ、少しでも利益が上がるように本を置くスペースをやりくりしているので狭く深いニーズを満たすほどの数は置けない。

今や書籍もネット通販のほうが便利である、PC上で好きなものをクリックしレビューに目を通し、それに興味が湧けば配送料無料のサービスで玄関口まで持ってきてもらえるのだ、こんなに便利な話はない、当然ながら私が欲しがっている本だって楽々買える。

だが、私はネット通販は選ばなかった。

理由は簡単、町内の書店に潰れてほしくなかったのだ、私は活発に読書を楽しむほうではない、冒頭にも書いたが本を買うのは久しぶりだ、昨年買ったかどうかもわからないという頻度なのだ、それでもすぐには入手できずに取り寄せしなくてはならない不便な町内の書店を利用することにした、珍しく買う本の利益など店にはほとんど影響は無いに等しいのだけれど。

書店には独特の魅力がある、静かで、冷やかしでタイトル見ているだけでも楽しい、奇抜なものには立ち止まるしついつい手にとってしまう、なにより、書店のあの匂いが好きだ、衣料品や日用雑貨の集まるスペースとは全く異なる環境の匂いだ。

真剣な顔で棚に並んだ書籍の背表紙を追っている別の客の顔も好きだ、最上段の右か左か横方向へ順に目線でスキャンし、そして下の段へ移り上の段とは逆方向へ走らせ、そしてまた下の段では逆向きとなり、そこで終わるか最下段まで移動するか、いずれにせよそんな感じが面白い。

小さなCDショップが姿を消したように書店もどんどん消えて行く、書籍離れとネット通販の影響は大きいだろう、生き残れるのは大手の書店ばかりである。

町内のその書店の売り場面積はコンビニよりも一回り小さいといった程度だ、潰れて欲しくないなと思う。