隣のビルの社員さんがコンビニの入り口付近でタバコを吸っていた、今ではすっかり数を減らした公衆電話から少し離れた場所に設置された吸殻入れのあたりで、時刻は午後2時頃で私は仕事を終えて帰ろうと通用口から通りに出て少し歩いた場所だ。
その社員さんはよくお昼を食べに来てくれる人だ、その隣の男性は同僚だろう、笑いながら話をしている、私が見ているのに気付いたようなので近付いて挨拶をした、今日はここで休憩ですかと訊くと職場の喫煙所が廃止されたのでコンビニに来て吸っているのだと言う、そう、その人の職場はビル1棟を丸ごと使う大きな会社だ、そんなビルにも通用口があり、随分と控えめな庇の下に吸殻入れを置いて喫煙所としていた。
昔はビル内にあったらしいのだが、嫌煙権と分煙化で通用口に追い出され、そしてとうとうそこでも吸ってはいけないということになり職場は丸ごと禁煙化されてしまったという、愛煙家の社員さんは休憩時間の楽しみが無くなってさぞ寂しいことだろう。
コンビニの入り口で短くなったタバコをふかしながら「どこもかしこも禁煙ですよ」とその人は笑って言った、世の中の流れなのだろうが他人の迷惑にならぬ場所ならばそこまできつく禁止しなくてもよいのではないかという気はする、つい最近までの通用口の喫煙所など人が通るのは朝と夕方の施設警備員くらいらしい、頻繁に人が行き来する場所ならともかく、日に何度か警備員が通る程度なのだ、タバコくらい良いではないか。
私はタバコを止めて随分な年月が経つ、止めてみると他人のタバコの煙や匂いが気になるものだ、だからこその分煙化で吸う人は迷惑にならぬようにと吸わない人と隔てられた場所で吸おうとしているし実際吸ってもいる、それくらい構わないだろう。
「あの通用口はますます殺風景なんでしょうな」と吸殻入れを撤去されたそこのことを訊いてみると無くなった吸殻入れの代わりに腹筋運動をするためのベンチ状の器具が置いてあるらしい、社長の案だそうだが目の前の社員さんは「誰も使ってませんよそんなもの」と苦笑。
まあ、タバコは体によくないし、金もかかるし、匂いも気になる、愛煙家以外にはなんのメリットもないが、だからと言ってとにかく吸うなと厳しすぎてはストレスを与えるだけだろう、普段は誰も来ない通用口での喫煙くらい認めてあげればと思う。