あと少しで我が自宅という場所で別の階の住人が自転車を押しながらこちらへ歩いてくるのが見えた、少し遅れて相手も気付いたようなので手を挙げて挨拶をした。
ずっと自転車を押しているのでパンクだなと思ったのだが違った、なんと、ベルトが切れたのだという、その住人の自転車はチェーンではなくベルトドライブなのだ。
ベルトは伸びず切れずというのがメリットと思われているが永遠に品質と堅牢さが変わらない物などありえない、ベルトだっていつかは劣化する、ただ、買って4年の自転車だというので早すぎるような気はする。
いつ切れたのかと訊けば、自転車置き場に来た時は切れて垂れ下がっていたという、そんなこともあるのか(!)、劣化なのかそうでないのかは分からないと本人は言う。
「そうでない」とは誰かの悪戯という可能性に触れているのだ。
確かに劣化には早すぎる、毎日福岡市から北九州市まで山越えで往復しているわけでもなく、乗ってから降りるまでずっと立ち漕ぎをしているわけでもなかろう、先にも書いたがたかだか4年だ。
とはいえ通りに放置していたわけでなく自転車置き場に置いていたし、誰かがわざわざ頑丈なハサミなどを持って来て切断する理由も思いつかない。
前カゴのレジ袋に切れたベルトが入っていたので見せてもらったがスパッという感じとはちょっと違っていた、切れてしまったのか、切られたのかは微妙で私には判別つかない。
そこへ冷たい雨だ、空が暗くなって雨が落ちてきた、その住人は自転車を押して2kmほど離れた場所の購入店へ持って行くと言った、その店までの道はずっと平坦でパンクではないので車の少ない路地を選べば漕げずとも跨って地を足で蹴れば楽に進めるのではないかと言うとなるほどと笑っていた。
雨が強くなってきた、水を弾きそうな服ではない、店に着いた時はびしょ濡れだったのではないか、今日は風も強くて寒い、自転車の修理代はかかるし、冷たい雨で寒い思いをしただろうし、その住人にはついてない一日だったのだ。