親しい乾物屋(2015年10月26日のブログ)のパートさんが今月いっぱいで辞めるという、65歳になったのを機に引退し西区に住む息子夫婦と一緒にのんびり暮らすらしい、乾物屋で働き始めたのが30歳というから35年も続いたことになる、結構な力を使う仕事でもあったはず。
仕事が終わってからそのパートさんと話でもしておこうと地下鉄でそこへ遊びに行くといつもとかわらず昆布をハサミで切っていた、私の顔を見ると「端っこがあるよ」と昆布の端の切り落としを集めたカゴをこちらに寄せた、パートさんらがよく食べるおやつになっている、私も少しいただいて小さな欠片を口に入れた。
作業場の奥では社長と大男の従業員「にこちゃん」がかつお節の加工をしていた。
背もたれの部分が壊れた折りたたみのイスをパートさんの近くに置いて話をしていると、別のパートさんが窓から外に向かって「四角いところを丸く掃いたってきれいにならないよ! やりなおし!」と大きめの声で言った、誰に言っているのだろうと立ち上がって窓の外を探せば30代半ばくらいの女性が作業場の外を掃いていた。
パートさんに訊くと辞めるパートさんの代わりに入った新人さんらしい、今は修行中なので厳しく教えているのだと言う、「掃き終わったら帯び(切ってない昆布)箱を全部中に入れなさい!」とまたもパートさんの声。
新人さんは箱を抱えて作業場内に積んでいたが何度目かで疲れて箱を重そう持ち上げたところへ横から社長さんが「いいよいいよ、俺がやっておくから」と止めに入ったのだが「社長! 自分でさせなきゃだめ!」とパートさんに叱られていた。
「私ら60過ぎのばーちゃんでもできるのに」と聞こえるように言う、確かに、60歳を超えても皆力仕事を平気でこなしていて、よほど重いものでない限り自分で片付けている、パートさんは更に社長に「自分でできるようになってもらわないと長く続かないよ」とクギを刺した、ここのパートさんは強いのだ。
新人さんは入って1週間ほどらしい、鍛えられている真っ最中だ、今月いっぱいで辞めるパートさんの後を継いでいろんな仕事を担うようになった頃にはすっかり仕事にも慣れて余裕が出ていることだろう。
きつめの教育や指導は本人にとって虐めのように思えるかもしれないが、私から見れば早く一人前になって欲しいという愛の鞭なのだと思える。
さて、そんな愛の鞭は新人さんの心に届くだろうか、届かなければ嫌気が差して辞めてしまうだろう、次にその乾物屋に行くのは仕事で使うかつお節や干しアゴ(トビウオの干物)の相談に行く10月後半なのだ、はたして新人さんは根付いているだろうか。