2017年1月9日月曜日

まことに危険なり


久々にNetflixの自動再生機能が便利だなと思えるドラマを見つけた、タイトルは「ファーゴ」、20年ほど前に同タイトルの映画があったが、これはそれを元にしたドラマのようである。

各話の冒頭で、

これは実話である
実際の事件は2006年ミネソタ州で起こった
生存者の希望で人名は変えてあるが
死者への敬意を込めその他は忠実に描いた

・・・と、表示されるがこれはリアリティさを醸し出すための演出ということらしい、1話目でこれを目にした時に私は信じてしまいそうになった。

ミネソタ州の田舎町で保険販売員として働く男が高校当時のいじめっ子と町で出会った際にケガを負って病院へ行き、診察待ちの間にそこの待合室の隣りに座る男にケガの顛末を喋ってしまうことからいろんな人を巻き込んでの恐ろしい連続殺人事件が起きてしまうのだが、ドラマの導入部とも言えるこの部分から隣りに座る男=殺人鬼から滲み出る異様な雰囲気が画面を通してで観ているこちらにありありと伝わってきた、視線だけでも既に禍々しいのだ、その上に相手の裏や弱い部分を見透かしたような口ぶりで囁くように話しかけては心に付け入って来る、なんとも邪悪だ。

演技力のお陰なのだろう、黙っていても眼差しだけで相手を尻込みさせるような威圧感と不気味さがなんとも言えない、この殺人鬼の風貌に見覚えがあるなと思っていたら演じる役者は「ビリー・ボブ・ソーントン」、いろんな映画に登場しているはずなのにパッと頭に浮かんだのは2002年公開の「チョコレート」(英題は「Monster's Ball」)、黒人を見下す白人看守役で登場し、罪を犯した黒人死刑囚の刑を執行する少し前あたりから始まる映画で、のちに自ら刑を執行した男の妻に心を寄せるようになるという役どころだった。

その時の、前半の冷徹な感じがこのファーゴの役に受け継がれている、その映画の時に加えて徹底した冷酷さ、非情さが賢さと共に際立っている、他の登場人物と比べても華奢に見える容姿とは相反して誰よりも強くしたたかである。

もし、こんな事件が本当に起きていたら100年に渡って語り継がれる黒歴史となるのは間違いない、まことに危険な男なのだ。

この殺人鬼を追う地元警察署の女性副署長がまた素晴らしい、こういった事件物のドラマにありがちな男勝りで美しくスレンダーな人物というものではない、近所に居そうな、人の良さそうな女性で、日常の普遍的な場面で出会えそうな人物なのだ、このキャスティングは正解だと思う、リアルさに貢献しているはずだ。

現在は1シーズンの9話目の途中まで視聴した、次へ次へと観たくなるのでシーズン2を全て観終えるまでにはそうかからないと思う。

アメリカが舞台なれど、どこか北欧の寂れた町を舞台にしてもそのまま違和感なく展開できそうな、そして、テレビドラマでありながらなんとなく映画を観ているような気さえする真冬の吹雪と氷に埋もれた町を舞台にしたドラマである。