「どうも指に髪の毛が刺さったみたいなので刺さったままなら抜いてください」・・・。
夕方にやって来た甥っ子がそう言って私に指を見せた、左手の人差し指の末節、つまりは先端と第一関節との間である、それよりも髪の毛が刺さったという点が気になったので詳しく訊くと、鏡を見ると耳の上に髪の毛が掛かっていたので散髪に行こうかと思ったが、その耳に掛かった部分だけをハサミで切ればもう1週間くらいは散髪を遅らせることができるだろうと自分でカットし、切った髪を指でまとめて捨てようとギュッと摘んだ時にチクリと痛んだのだが、髪の毛が刺さってぽろりとおちたのか、刺さったままなのか判断できないので私の所へ来たという。
指に何か刺さったからといって何故私のところへ来るのだろう、自分で見ても刺さっていそうでなさそうではっきりしないと言う、病院で診てもらえと言えば刺さっていなかったら恥ずかしいから行けないのだそうで、・・・ああ、面倒臭い甥っ子である。
ちなみに、自分で部分的にカットしたのは散髪代をケチるというよりは、寒くて外出が嫌だったらしい。
LEDライトと針と毛抜き、それと虫眼鏡、100円ライター、消毒用アルコールを用意して見てみると・・・、あらら、本当に刺さっていた、なんという剛毛なのだ(!)。
針と毛抜きの先をライターで焼いて、洗わせた指の先をアルコールで消毒し針先で皮の一部を切って開いて見えてきた頭を毛抜きで摘んでスポッ、・・・長さは3mmほどはあろうか、こんなものが刺さるとは。
「ほら! やっぱり刺さっていたね!」となぜか嬉しそうにタワシのような毛の硬い甥っ子は言う。
ところで、指に何か刺さっているかどうか知りたい時は指の上からライトで照らしてもなかなかわからない、そこで、刺さっているであろう場所の真裏にライトをピタリと当てて指の中から照らすようにしよう、指を透過する光で内部の様子を見るのだ、棘が刺さっていれば黒い影となって長さや向きがちゃんと見える、今日の髪の毛もそうだ、第一関節側へ向かって斜め奥に刺さっているのが黒い影となってクッキリ見えた。
ただし、ライトの光量が充分にあり、光が透過できる程度の部位にしかこの方法は使えない、手のひらの中央部などの厚みではもう無理である、光は届かない。
それにしても虫眼鏡なしでは細かい部分がとても見辛かった、近眼の老眼だ、ああ、歳だなと思う。