日が暮れて姉のところへ行った、仕事場で大量に仕入れた梨のお裾分けである。
ちょうど晩メシの準備をしているところで甥っ子も来ていた、今日は随分と遅い晩メシだなと思ったら甥っ子が来る時間に合わせて遅めだったのだらしい、姉はガスコンロのグリルで秋刀魚を焼いていた、姉と甥っ子の分で2尾だった、私にも食べて行くかと訊いたが既に済ませていたのでお茶だけ貰った。
私もこの秋どれだけ秋刀魚を食べただろうか、去年よりは高めだったがそれでも安く、調理も手軽でおかずにぴったりだ、ちなみに私はグリルではなくフライパンで焼いている。
焼きあがった秋刀魚を食べている2人を見ていたがどちらも腹(内蔵)は事前に取り除かれていた、苦味と寄生虫がいそうなのが嫌だと言う。
私も秋刀魚の腹は食わない、よく「魚好きは腹を好んで食う」と言われているが、魚の身は好きでも腹は食べようとはしない、昔は平気で食べていたのだが、ある時腹の中からウロコがザラザラと出て来たのを境に食べなくなった。
姉も甥っ子も焼きたての秋刀魚を美味しそうに食べていた、他には豆腐とピーマンとエリンギの炒めものにマカロニサラダか、ほほう。
私が「自炊の時でも魚はたまに食え」と甥っ子に言うと「時々食べてるよ、秋刀魚も」とモグモグしながら言う。
グリルか私のようにフライパンか、どう焼いているのかという意味で「どうやって?」と訊けば「どうやってって・・・、ただ、こう、パカッと・・・」と手でやってみせた。
ああ、缶詰か、まあ、それも手軽で美味しく栄養たっぷりな秋刀魚には違いない、続けて「今はね、タレに漬かった蒲焼きみたいのじゃなくて塩焼きっぽい缶詰もあるよ」と教えてくれた、なるほど、今はそういったものもあるのか。
更に「サバのもあるよ」と言う。
もしかして甥っ子は缶詰ばかり食っているのだろうか、姉の手料理が美味しかったのか相当な勢いでもりもりとメシを食っていた。
茶碗と箸を手にしたまま「お母さん梨分けてくれる?」と私が持って行った梨を姉にねだっていた、姪っ子とは逆にバカなくらい単純で何事にも頼りない甥っ子だが美味しそうにメシを食う姿がなんだか可愛く見えたのだった。