2018年6月22日金曜日

子は親の鏡

これで採算が取れるのかとこちらが心配になってしまうほどコスパの高いビュッフェレストランがある、私は知らなかった店で友人が連れて行ってくれた。

低料金だがぞんざいに調理された料理はなかった、どれも丁寧に作られているのがよく分かる、薄すぎず濃すぎずの味付けも上品だし、品数さえ揃えてしまえばそれで良いのだという一部の同種のレストランとは別のものだった。

隣のテーブルとの間隔も広めで席もゆったりしていた点も評価できる、BGMは季節柄かボサノバが控えめな音量で流れていたのでテーブルを挟んだ対面との会話にも邪魔にはならず快適だったと言えよう。

ただ、残念だった点がある、行儀の悪い客だ、もちろんこれは店の責任ではない。

歳はいくつなのだろう、およそ30代前半であろう大柄な女性が料理の中から嫌いな食材を摘み出して大皿に残して行くのだ、なので青菜とイカの炒め物では青菜と椎茸を残してイカばかりを持って行くので青菜と椎茸の炒め物になってしまった、蒸し鶏の大葉ドレッシング和えでは皮の付いた鶏肉は全て残し身の部分ばかりを持って行ってしまうのだ、見かねた店員が「全ての食材をひとつにしての料理ですから選り分けるのはご遠慮ください」と小声で言うと女性はムッとした様子で席に戻って行った。

その同じ席からはたぶん父親であろう男性が料理の前へとやって来た、まだ口の中には何か入っているらしくモグモグと噛みながらである、男性は白身魚の南蛮漬けを豪快に皿に盛ったが、その隣にあった鶏もも肉のガーリック炒めを見つけると先に盛った南蛮漬けを全て大皿に戻したのである、男性は自分のテーブルから皿を手にやって来たので使い回しの皿ではないのか、その上に乗せた料理を元へと戻したのだった。

「あっ!」と小声で驚いた店員が止める間もなくの出来事だった、「一度取った料理はお戻しにならないようお願いします」と言うと男性は「食わないから戻しただけなんだが?」と分かっていないもよう、店はしかたなく南蛮漬けを引き下げた。

しばらくの後に驚きの出来事が起きた、なんとこの親子がいるテーブルにフロアの責任者が呼ばれたのだ、大きめの声でクレームをつけているので嫌でも耳に入ってきた。言い分を要約すると「あの店員は感じが悪い」ということだ、この親子の行儀の悪さを抑えようと控えめに言った店員についてのクレームなのだ。

やれやれである、子の行儀が悪ければ親もまた然りなのか、子は親を見て育つという、親がそうなので子もそれでいいのだと解釈して育ってきたのだろう、傍から見ていて恥ずかしくなるような子の無作法は親の責任なのだ。

「子は親の鏡」という諺がある、まさにそれだ、言い得て妙である。