2018年6月12日火曜日

私ならこの曲:井上陽水

「思ったよりも夜露は冷たく」という出だしとどこか寂しさと切なさ漂うメロディーラインにいきなり脳と耳を掴まれてしまった感のある「帰れない二人」が私にとってのベストである。

当時の私は小学生、だが、この曲も収録されたアルバム「氷の世界」発売時の地元福岡での熱狂ぶりはまさについ最近のように覚えている、私がこのアルバムを聴いたのは私自身が買ったわけではない、姉が買ったのを聴いたのだった。

当時はよく「帰れない二人」の情景をいろいろと思い描いてみたものだった、季節はいつだろう、「夜露は冷たく」というので昼と夜の気温差が多きな晩秋の頃だろうか、「街の灯が消えました」というのは夜明けの明るさとの入れ替わりで消えたのだろうか、それとも時刻も深夜帯に差し掛かったので消えたのだろうか、「もう星は帰ろうとしてる」という星はどれだろう、晩秋の星だとすれば何だろう・・・等々。

帰ろうとしている星との対比でそんな情景の中の帰れぬ二人と微妙な気持ちの揺らぎを歌うのが小学生の私の胸に切なく響いて忘れられない名曲である、同アルバムの中ではアルバムタイトルにもなっている「氷の世界」が圧倒的な認知度なのだろうけれど、私には「帰れない二人」なのだ。

ちなみに私の姉は「小春おばさん」がベストだと言った、この曲を聴いて泣いていたのも知っている、何かの記憶と重なる部分でもあったのか、姉にはとても沁みる1曲だったようだ。

アルバム「氷の世界」は100万枚売れたそうだ、日本初だという、どの曲も素晴らしいので納得がゆく、今のこの時代に新しいアーティストからこういった沁みて焼き付くほどのアルバムが登場しないのは残念である。

またいつか夢中になって繰り返し聴ける曲に出会えるといいなと思う、これはしっかり叶って欲しい。