仕事帰りに郵便物を受け取りに実家に寄った、時刻は午後6時を少し過ぎた頃、冬とは違って日没はあと1時間ほど経ってからで随分と遅くなった、薄暮でもない低いなりの直射日光で後頭部や背中がぼんやり温かい。
那珂川を渡ってもう少しで実家という地点で近所のおじいさんが白い雑種犬を連れて散歩しているのが見えた、こちらへ向かっている、すぐに私達はすれ違う距離、犬は「コー」という名の老犬である。
コーは今年に入ってすぐに後ろ足が立たなくなり病院に連れて行って診てもらったとそのおじいさんから聞いた、どこが悪かったのかはっきりしないまま春になるとまた歩き出したらしい、獣医は原因はよく分からないが年齢的なものもありそうなので次回同じような状態になると急激に衰えて危ないかもしれないと言われたらしい。
コーを連れたおじいさん、西の空を眺めて眩しそうにしている、オレンジのリードで繋がれたコーはほんの2歩分ほど先から立ち止まり、沈みつつある西陽に照らされているおじいさんを同じように眩しそうに振り返っている、どちらもトボトボとした足取りで、コーのほうが終始おじいさんよりほんの少しだけ先を歩いていた。
一体どちらが連れられているのかわからない。
おじいさんもコーも少し小さくなったように見える、肩幅が狭くなったような、背中が丸くなったような。
実家に着いて郵便物を受け取り、台所で母と少し話をし、再び表に出ればちょうど日没時の午後7時10分過ぎ、自宅へ戻る途中で先ほどのおじいさんのお宅の前を通るとコーを繋いでいたオレンジ色のリードが玄関先の適当な場所に二重の輪にして下げてあった。
コーは室内で飼われているのだ。
飼い主に似ておだやかな犬、吠えたところなど見たことがない、福岡市民体育館の駐輪場付近に捨てられていた子犬だったらしい、利口で大人しく成犬になっても初対面だろうが子供だろうが触られてもまばたきをしながらゆったりとしている犬なのだ。
犬だって歳を取る、最近は固いものは噛みにくそうにしているらしい、長生きしてほしいなと思う。