2013年10月22日火曜日

胡麻油は胡麻から

今日の仕事は夕方までで、午後の休憩時間をお茶を飲みながら厨房からぼんやりと外を眺めていた、秋風吹く晴れた空の下を週に何度かうちの店へ来てくれる近所の会社の若い営業さんが歩いて来るのが見えた。

遅い昼食のようだ、今日はこちらが午後の休憩時間に入った頃に遅めである、いつものようにスーツ姿の同僚さんとではなく専門学校に通っているという普段着で痩せた弟さんと一緒に。

休憩を切り上げて注文の品を作る、出来上がりを持って行ったのはパートのおばさんではなくこの私、休憩時間を持て余していたので何かすることはないかと探していたところなのでちょうどよかった。

普段は裏の調理場ばかりで表にはほとんど顔を出さない、なのでたまに出て行くと「おや、あの人は誰だろう?」とお客さんから不思議そうな顔をされることがあるのが可笑しい。

さて、若い営業さんとは顔馴染みなので挨拶と少しだけ雑談、「うちの弟です」と隣の若い人を指差す、あまり似ていないその弟さんが「どうも」とこちらに笑う。

続けて「いい匂いですね!」と手元の料理のことを言う、それは鶏肉に酒と粗塩を揉み込んで胡麻油を使って強火で焼いたものでとても香ばしい品なのだ。

そう言うと油にどれだけ胡麻を入れたのですかと訊かれた。

んん? どれだけ?

・・・いや、違う、胡麻油は胡麻を圧搾し(或いは薬品処理で)取り出す植物油なのだと答えれば、てっきり「油」の中に胡麻をドサッと入れて漬けるか混ぜるか振れば「胡麻油」の出来上がりなのだと思っていたらしい。

まあ、確かに油に胡麻を浸せば少しくらいは胡麻油が油に馴染んで滲み出してくるかもしれないが。

随分と昔に某所で「寺と神社は別物なんですか?」と20代の人に訊かれた時は驚愕したことがあるが今回はそれほどではない。

ただ、正直なところ、「ひょっとしてあまり知られていないことなのか」と少しだけ驚きはしたけれど。

胡麻油は胡麻から、オリーブ油はオリーブから、ただし、サラダ油はサラダからではない。