今日の仕事は夕方までで、午後の休憩時間をお茶を飲みながら厨房からぼんやりと外を眺めていた、秋風吹く晴れた空の下を週に何度かうちの店へ来てくれる近所の会社の若い営業さんが歩いて来るのが見えた。
遅い昼食のようだ、今日はこちらが午後の休憩時間に入った頃に遅めである、いつものようにスーツ姿の同僚さんとではなく専門学校に通っているという普段着で痩せた弟さんと一緒に。
休憩を切り上げて注文の品を作る、出来上がりを持って行ったのはパートのおばさんではなくこの私、休憩時間を持て余していたので何かすることはないかと探していたところなのでちょうどよかった。
普段は裏の調理場ばかりで表にはほとんど顔を出さない、なのでたまに出て行くと「おや、あの人は誰だろう?」とお客さんから不思議そうな顔をされることがあるのが可笑しい。
さて、若い営業さんとは顔馴染みなので挨拶と少しだけ雑談、「うちの弟です」と隣の若い人を指差す、あまり似ていないその弟さんが「どうも」とこちらに笑う。
続けて「いい匂いですね!」と手元の料理のことを言う、それは鶏肉に酒と粗塩を揉み込んで胡麻油を使って強火で焼いたものでとても香ばしい品なのだ。
そう言うと油にどれだけ胡麻を入れたのですかと訊かれた。
んん? どれだけ?
・・・いや、違う、胡麻油は胡麻を圧搾し(或いは薬品処理で)取り出す植物油なのだと答えれば、てっきり「油」の中に胡麻をドサッと入れて漬けるか混ぜるか振れば「胡麻油」の出来上がりなのだと思っていたらしい。
まあ、確かに油に胡麻を浸せば少しくらいは胡麻油が油に馴染んで滲み出してくるかもしれないが。
随分と昔に某所で「寺と神社は別物なんですか?」と20代の人に訊かれた時は驚愕したことがあるが今回はそれほどではない。
ただ、正直なところ、「ひょっとしてあまり知られていないことなのか」と少しだけ驚きはしたけれど。
胡麻油は胡麻から、オリーブ油はオリーブから、ただし、サラダ油はサラダからではない。
2013年10月11日金曜日
猿の遺産
午前中のこと、パートのおばさんがレジの感熱ロール紙が残り少なくなったので新しいものを準備しようと棚の上段に置いていた箱を取り出した際、その上に乗っていた使いかけのカーボンロールがハラリと下に落ちて来たらしい。
「きゃあ!」と驚きの声をあげるパートさん、床には長くほどけたカーボンロール。
「びっくりした、スルッと落ちてきたのでヘビかと・・・」と他のパートさんと笑う。
そもそも人は何故ヘビを怖がるのだろう、絞め殺されかけたり毒ヘビに咬まれて死にかけたという経験がなくとも音も無く地を這う蛇を見つけると怖がるか嫌がるか、いずれにせよ良くは思わない。
怖くはない、嫌いではないと言う人は少数派だと思う。
大人しいヘビはいくらでもいる、人を噛む犬だって中にはいる、それなのに大方の場合だと犬は好かれ、ほとんどの場合ヘビは嫌われる。
あのパートのおばさんも塀の上に猫が座ったままこちらを見ているのに気付けば「あら」とでも言って微笑むかもしれないが、ヘビがとぐろを巻いてこちらを見ていたとなるとやはり「きゃあ!」に行き着くはず。
とりあえずヘビを怖がる理由は猿から進化する際に受け継いだ本能的なものというのはどうだろう。
猿は無条件でヘビを怖がる、異常な怖がりかたをする、枯葉の上をヘビが這っているのを見つけると木の上で鳴き叫んでパニックに陥る、あの恐れようが進化してもなお人に受け継がれているのでは・・・という考え。
・・・などと私がそんなふうに考え始める以前から同じような考えを持っていた人はそこそこいて、逆に無関係だと言う人も同じくらいいて、実際のところはどうなのかはよく解らない。
まあ、どちらか正しくともヘビは嫌われやすいことに変わりは無いのだけれど。
私は平気でヘビに触る、最初に手で掴んだのは保育園の時で、道具箱を収めようと棚に押し込んでも何故か入らないので奥を覗けば粘土(油粘土)が置かれていて、仕方なくその粘土を引っ張り出してみれば実はヘビだった・・・というのが最初。
ツルツルした生き物という感覚だったので怖さは無く、見た目や手の感触で観察していた時に騒ぎ出したのは先生たち、そう、今思い出してみれば猿の群れを彷彿とさせる騒ぎかた。
ほら、やはり猿から譲り受けた遺産なのかもしれない。
「きゃあ!」と驚きの声をあげるパートさん、床には長くほどけたカーボンロール。
「びっくりした、スルッと落ちてきたのでヘビかと・・・」と他のパートさんと笑う。
そもそも人は何故ヘビを怖がるのだろう、絞め殺されかけたり毒ヘビに咬まれて死にかけたという経験がなくとも音も無く地を這う蛇を見つけると怖がるか嫌がるか、いずれにせよ良くは思わない。
怖くはない、嫌いではないと言う人は少数派だと思う。
大人しいヘビはいくらでもいる、人を噛む犬だって中にはいる、それなのに大方の場合だと犬は好かれ、ほとんどの場合ヘビは嫌われる。
あのパートのおばさんも塀の上に猫が座ったままこちらを見ているのに気付けば「あら」とでも言って微笑むかもしれないが、ヘビがとぐろを巻いてこちらを見ていたとなるとやはり「きゃあ!」に行き着くはず。
とりあえずヘビを怖がる理由は猿から進化する際に受け継いだ本能的なものというのはどうだろう。
猿は無条件でヘビを怖がる、異常な怖がりかたをする、枯葉の上をヘビが這っているのを見つけると木の上で鳴き叫んでパニックに陥る、あの恐れようが進化してもなお人に受け継がれているのでは・・・という考え。
・・・などと私がそんなふうに考え始める以前から同じような考えを持っていた人はそこそこいて、逆に無関係だと言う人も同じくらいいて、実際のところはどうなのかはよく解らない。
まあ、どちらか正しくともヘビは嫌われやすいことに変わりは無いのだけれど。
私は平気でヘビに触る、最初に手で掴んだのは保育園の時で、道具箱を収めようと棚に押し込んでも何故か入らないので奥を覗けば粘土(油粘土)が置かれていて、仕方なくその粘土を引っ張り出してみれば実はヘビだった・・・というのが最初。
ツルツルした生き物という感覚だったので怖さは無く、見た目や手の感触で観察していた時に騒ぎ出したのは先生たち、そう、今思い出してみれば猿の群れを彷彿とさせる騒ぎかた。
ほら、やはり猿から譲り受けた遺産なのかもしれない。
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