前回見かけたのは・・・たしか4年か5年前にはなろうか、小学〜中学と同じ学校に通ったS君を見かけたのだった。
前回は横断歩道を渡るところを車の中からだったので声は掛けられず、今回は私を嫌う御父上と思しき年配のかたとご一緒されていたのでまたも声を掛けることはできなかった。
御父上は中学当時に野球部だったS君が地区大会のメンバーに選ばれなかったのを私が釣りに誘って部活動をサボらせたせいと思っていて「息子の邪魔をするな、お前は邪魔者だ」と言って怒っていた人なのだ。
・・・いや、それでも声は掛けようかと考えたのだけど、雰囲気的に邪魔をしてはいけない感じが漂っていたのだ。
特徴的な端がクルリと巻いたような眉毛と厚ぼったい二重、そしてモコモコした口元といった特徴は老けてしまっても変わらない、額や目尻にシワが入ろうが、こめかみに白髪が目立とうが一目でS君なのがすぐに分かる。
野球帽を被せたら「こまわり君」そっくりだったのだ、当時流行っていたし、似ているのでS君のことを「こまわり!」と呼ぶ上級生もいた。
そんなこまわり君もこちらを見さえすれば気がつくかもしれないが、ジッと斜め下を見つめていて微動だにしない、表情が暗いのである、楽しそうな感じがチラッとも漂ってこない、そんな場所で御父上と一体どれだけ深刻な会話をしているのだろうと考えてしまうほど。
注文したラテができあがるまで後ろ姿を見ていました、途中で御父上が短く2度ほど何かをS君に言いましたが、S君は相変わらずジッとしたまま。
ああ、御父上も老けてしまわれた、歳なりの「お年寄り」の顔なのだ、私を睨みつけてS君から遠ざけようとしていた気迫のあるお顔ではもう無い。
熱いラテを片手に昭和通りを東へ、那珂川を渡って実家に寄りました、郵便物を受け取るついでに中学時代の卒業アルバムを見てみる、S君は10代なりの顔で若い、僕も当然若い。
ふたりしてバカ話で大笑いし、ドキドキしながら隠れて吸ったタバコで目眩を起こして吐き気の後悔していたあの頃が懐かしい。
今や私もS君もすっかり老けてしまったけれど。